医療法人社団泰栄会
つつじが丘診療所

所感のある在宅患者の一例について
医師の立場から、看護師の立場から、ケアマネージャーの立場から


事 例
Sさん 86歳 男性 要介護3

【主病変】尿管膜のう胞、腹膜偽粘液腫 
腹膜偽粘液腫 主に虫垂、卵巣などから発症し、尿膜管由来のものは大変珍しい。
          難治性、再発率が高い
          治療法 可能であれば原発巣の摘除 腹腔内の粘液除去
          化学療法、放射線療法は無効

既往歴
30歳:胃潰瘍にて胃切除
82歳:血行不良のため 左視力低下 他に通風、高血圧症未
84歳:S病院にて 癌性腹膜炎の精査、診断 高齢の為治療断念 在宅医療となる。
85歳:3月 在宅訪問診療開始

家族構成
妻、長女、次男と同居 長男は近隣に在住
介護は主に妻と長女(自宅にて仕事あり)

現病歴

高血圧、(200〜/90〜) 不整脈あり SPO2 91% 腹水著明 疼痛なし
起き上がりに要介助、食事介助なし、排泄介助なし

病状理解

本人、妻に未告知 兄弟3人に告知済

問題点

本人は未告知で在りながら、現病に気づいている様子。
高齢の為家族の意思により手術および生検断念。
体動低下による皮膚の発赤
介護者の不安・疲労(私はいつまで頑張れる???)

訪問診療の実際

訪問診療 1回/週  訪問看護 2回/週

経過・考察

本人の生に対する執着が希薄に感じられた。(戦争体験ゆえか???)一後に変化がある
介護者はTさんが大好きなので、自分の体力の限界を超えた介護をしていた。
5月に入り病状が悪化し、家族の介護負担が急速に増えた。要介護3→4→5
予想を上回り、当初夏は越えられない様子であったが、実際には10月まで延命した。
介護者の限界を感じ 10日間のショートステイを実施した。
ショートステイ開始直後不穏状態を示すが、数日後改善する。
退院後自宅に戻り、6日後家族の手厚い加護の元逝去される。

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